乳がん治療
薬物治療・手術・放射線治療 を組み合わせて行います
薬物療法
浸潤がんの場合(乳がんの種類)
浸潤がんで3㎝以上のものでは術前薬物療法を行うことがあります。
腫瘍が大きい場合も術前薬物療法を行い、腫瘍が小さくなれば乳房温存が可能になります。術前薬物療法は基本的には手術後に用いる薬剤と同じものを用います。
術前に効けば腫瘍も小さくなるのでこの薬は効くという実感が得られ、手術後の「薬物療法に取り組むモチベーション」も高まります。
ホルモン陽性ならホルモン療法、HER2陽性なら抗HER2療法が選択肢にはいります。
非浸潤がんの場合
がんが乳管内にとどまっている非浸潤がんは原則薬物療法は行いません。
手術・放射線療法といった局所の治療だけを行います。
遺伝子の発現解析検査
ホルモン療法単独か抗がん薬併用すべきかの判断材料としてがん細胞の性質を遺伝子レベルで調べる「複数遺伝子の発現解析」が行われています。
これには「オンコタイプDX」「マンマプリント」といった検査方法がありますが、保険適用外のため1回に40万円かかります。ご希望の方がおられましたら この検査を行う医療機関をご紹介いたします。
手術法
乳房温存術~温存できるのは原則3センチ以下(約6割が選択する)
乳房温存術は病巣を含めて乳房の一部分を切除する手術で病期ステージが0期,Ⅰ期,Ⅱ期の早期がんが対象になる標準治療です。
乳房温存術が可能かどうかは、腫瘍の大きさだけでは決まらず、他の要因も考慮します。
また乳房温存術の後は放射線療法を行うのが標準治療です。
自分にどのような選択肢があるのか、術後にできる傷の位置や乳房の形がどのように変わるのかよく医師に説明してもらいましょう。
乳房全切除術とは乳房をすべて切除すること
- 腫瘍直径3センチ超
- 乳がんが広範囲に広がっている
- 複数の乳がんが同じ乳房内の離れた場所にある
- 乳房温存術後に何らかの理由で放射線治療を受けられない
- 患者さんの希望
乳房再建術
乳房再建術を組み合わせることで失われた乳房を自分の体の一部(脂肪、筋肉、皮膚)や人工物を入れて膨らみをに取り戻すことができます。
リンパ節切除の要・不要
リンパ郭清とは~乳がん手術で腋のしたのリンパ節を切除すること。
がん細胞はリンパ節へ転移します。腋の下はリンパ節が複数ありますが、他のリンパ節に比べて 腋の下のリンパ節は乳房に一番近く、がん細胞が到着しやすいところなのでこれを調べることで他のリンパ節への転移の可能性を推測できます。
現在では以前のようにリンパ節をすべて取らずに極力狭い範囲にとどめるようになっています。なぜならリンパ節郭清を広範囲で行っても生存率は変わらないことが研究で明らかとなったからです。
センチネルリンパ節生検
この検査では手術中にアイソトープや特殊な色素をがん組織に近くに注入し、これらに反応した腋の下のリンパ節の部位を見つけて確かめます。取り出したリンパ節は病理検査で転移の有無や転移巣の大きさを調べます。
がん細胞が最初にたどり着くのはセンチネルリンパ節。ここを経て他のリンパ節に転移するのでここにがん細胞がなければ転移はないと一応判断します。つまり、腫瘍とセンチネルリンパ節を切除するだけで済むのです。
放射線治療
原則として、乳房温存術のセットで行う。残ったがん細胞をたたき局所の再発を防ぐ放射線療法。乳がんは放射線療法が効きやすいがんです。
再発予防効果は薬物療法単独よりも放射線療法併用したほうが高いことも証明されています。ご家族とよく相談した上で前向きに検討しましょう。