乳腺外科はいつ受診すべき? 専門医が解説する「症状があるとき」と「検診」

2026/6/9


医師監修コラム

乳腺外科はいつ受診すべき?

〜専門医が解説する「症状があるとき」と「検診」2つのタイミング〜

乳腺外科を受診するタイミング
この記事の結論

乳腺外科を受診するタイミングは、大きく2つに分かれます。ひとつは「気になる症状が出たとき」、もうひとつは「症状がなくても受ける検診」です。

しこり・血性(けっせい)の乳頭分泌・皮膚のひきつれ・乳頭の陥没(かんぼつ)などは、様子を見ずに受診してください。一方、自覚症状がなくても、日本では40歳以上の女性に2年に1回の乳がん検診が推奨されています(厚生労働省)。

この記事では、「どんなときに」「どのタイミングで」乳腺外科を受診すればよいかを、症状編と検診編に分けて分かりやすく解説します。

1 乳腺外科を受診する「2つのタイミング」

「乳腺外科にいつ行けばいいのか分からない」という声をよくいただきます。受診のタイミングは、次の2つに整理すると分かりやすくなります。

タイミングきっかけ目的
① 症状があるときしこり・痛み・分泌・皮膚の変化などに気づいたとき症状の原因を調べ、必要なら早めに治療につなげる
② 検診として自覚症状はないが、年齢的に検診の対象になったとき症状が出る前の早期がんを見つける

①は「気づいたら、できるだけ早く」、②は「決まった年齢から、定期的に」というのが基本です。乳がんは日本人女性が最も多く診断されるがんで、年間約10万人が新たに診断されています(国立がん研究センター)。だからこそ、この2つのタイミングを知っておくことが大切です。

2 【症状編】すぐ受診すべきサイン(レッドフラグ)

次のような症状は、様子を見ずに乳腺外科を受診することをおすすめします。これらは「必ずがん」という意味ではありませんが、原因を確かめておくべきサインです。

症状チェックポイント
しこり硬い・動きにくい・だんだん大きくなるしこりに触れる
血性(けっせい)の
乳頭分泌
血が混じった分泌物が、片側の乳頭から出る
皮膚のひきつれ・
くぼみ
乳房の皮膚が一部へこむ、ひきつれて見える
乳頭の陥没(かんぼつ)・
湿疹
もともとなかった乳頭の陥没、ただれ・かさつきが治らない
わきの下の
しこり・腫れ
わきの下にグリグリしたしこりや腫れを感じる

特に「片側だけ」「だんだん進む」「しこりを伴う」という特徴がそろうときは、早めの受診が安心です。痛みの有無にかかわらず、これらのサインがあれば受診の対象になります。

3 迷いやすい症状の受診目安

一方で、「急いで受診しなくても大丈夫なことが多い」症状もあります。不安をかかえこまないために、目安を知っておきましょう。

症状急がなくてよいことが多い早めの受診をすすめる
痛み月経前に両側が張る・周期に連動して軽くなる片側だけが進行的に痛む・4週間以上続く
分泌物透明〜白っぽい・両側・複数の乳管から血が混じる・片側の1か所から出る
しこり感月経前にだけ感じ、月経後に消えるいつも触れる・大きくなる

月経周期に連動した両側の張りや痛みは、ホルモン変動による生理的な変化であることが多く、過度に心配する必要はありません。ただし「いつもと違う」「片側だけ」と感じたら、迷わず受診してかまいません。判断に迷うこと自体が、受診してよい十分な理由です。

4 【検診編】症状がなくても受けるべき年代・頻度

自覚症状がなくても、年齢に応じて受けるべきなのが乳がん検診です。症状が出る前の小さながんを見つけることが目的です。

日本では、市区町村が行う対策型検診として、次の内容が推奨されています(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」)。

区分対象方法頻度
対策型
乳がん検診
40歳以上の女性問診+マンモグラフィ2年に1回

知っておきたいポイント

  • 40歳になったら、症状がなくても2年に1回の検診を習慣にしましょう。
  • 血縁者に乳がんの方がいるなど、リスクが高いと感じる場合は、40歳より前でも一度乳腺外科に相談してください。
  • 高濃度乳腺(デンスブレスト)の方は、マンモグラフィに加えて超音波(エコー)検査を併用すると見つけやすくなる場合があります。検診結果や体質に応じて医師に相談しましょう。
主要エビデンス
  • 厚生労働省:40歳以上の女性に対し、マンモグラフィによる乳がん検診を2年に1回推奨。
  • 国立がん研究センター:乳がんは日本人女性が最も多く罹患するがんで、年間約10万人が診断される。

5 受診に適した時期:月経周期との関係

「受診するなら、いつの時期がよいか」もよく聞かれます。月経のある方は、月経が終わった直後〜1週間ほどが一つの目安です。

この時期は、ホルモンの影響による乳房の張りが落ち着き、しこりや変化が分かりやすくなります。乳房を観察したり検査を受けたりするのに適したタイミングです。

ただし、これはあくまで「無症状で検診・相談に行く場合」の目安です。気になるしこりや血性の分泌など、レッドフラグにあてはまる症状があるときは、月経周期を待つ必要はありません。気づいたタイミングで受診してください。

6 専門家からのひとこと

外来では、「このくらいで受診していいのか迷った」とおっしゃる方が大勢いらっしゃいます。結論から言えば、迷ったら受診で大丈夫です。

多くの症状は、診察と検査で「心配ありません」と確認できるものです。その「安心」を持ち帰っていただくこと自体が、受診の大きな価値だと考えています。受診をためらって時間が経つより、早めにご相談いただくほうが、心にも体にもやさしい選択です。

FAQ よくある質問(FAQ)

Q. 症状が何もなくても受診していいですか?

A. はい、問題ありません。40歳以上の方は症状がなくても2年に1回の検診が推奨されています。年齢に達していなくても、家族歴などで不安があれば一度ご相談ください。

Q. 乳腺外科は何科にあたりますか?婦人科とは違いますか?

A. 乳腺外科は、乳房・乳腺の病気を専門に扱う科です。子宮・卵巣を診る婦人科とは異なります。乳房の症状は乳腺外科が専門です。

Q. 受診には予約が必要ですか?

A. 医療機関によって異なりますが、待ち時間短縮のため予約をおすすめする施設が多いです。当院では電話予約やWeb予約を行うことができます。当日受付も可能です。

Q. しこりが小さく動くので様子を見てもよいですか?

A. 自己判断はおすすめしません。良性のことも多いですが、診察と検査で確認しておくことが大切です。気づいた時点で受診してください。

8 監修者・著者プロフィール

監修

田中 完児(たなか かんじ)

リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 院長

学歴

昭和48年3月 大阪府立四条畷高校卒業
昭和55年3月 関西医科大学卒業

職歴

昭和55年4月 横須賀米海軍病院 インターン開始
昭和56年4月 関西医科大学付属病院外科学講座入局
平成7年4月 関西医科大学付属病院第二外科学講座 講師
平成8年11月 英国 Nottingham City Hospital, Breast unit 留学
平成15年4月 関西医科大学付属病院外科学講座(乳腺外科)講師
平成18年1月 関西医科大学付属枚方病院 乳腺外科・科長
平成19年4月 関西医科大学付属枚方病院 病院准教授
平成20年6月 リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 開院

免許・資格

ECFMG license of USA(米国医師免許)取得
GMC medical license of UK(英国医師免許)取得
日本乳癌学会専門医取得
日本外科学会専門医

役職

認定NPO法人 J.POSH 理事長
With you(あなたとブレストケアーを考える会)世話人

参考文献

  1. 厚生労働省. がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針. 健康局長通知. — 厚生労働省(がん検診)
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. がん統計(全国がん登録). 2022年データ. — がん情報サービス
  3. 日本乳癌学会編. 乳癌診療ガイドライン(疫学・診断編). 金原出版. — 日本乳癌学会
  4. 国立がん研究センター. 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ(乳がん検診). — がん検診(乳がん)

※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。症状が気になる場合は、必ず専門の医療機関を受診してください。

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