乳腺の主な病気
乳腺の主な病気
乳腺は、乳管や小葉、脂肪・結合組織などから構成され、ホルモンの影響を受けやすい臓器です。
乳腺に起こる病気は良性から悪性まで多岐にわたり、症状も「しこり」「痛み」「分泌」「皮膚の変化」などさまざまです。
このページでは、代表的な乳腺の病気とその特徴、検査、治療の概要をご紹介します。
気になる症状がある場合は、自己判断を避けて早めに乳腺専門医へご相談ください。
乳がん
- 概要
乳管または小葉の細胞ががん化する悪性腫瘍です。
日本では女性のがんの中で罹患数が最も多く、早期発見ほど治療の選択肢が広がり、治療成績も良好です。
- 主な症状
乳房のしこり、乳頭からの血性分泌、皮膚のえくぼ状陥凹(ひきつれ)、乳房の形の変化、乳頭・乳輪のただれ、腋のしこりなど。
ただし初期は無症状のことも多く、検診の重要性が高い病気です。
- 検査
マンモグラフィ、乳房エコー(超音波)、MRI、病理検査(細胞診・針生検)、腫瘍マーカーや遺伝子検査(必要に応じて)。
マンモグラフィは石灰化の評価に、エコーはしこりの性状評価に有用です。
- 治療
腫瘍の大きさやタイプ、進行度、患者さんの希望に応じて手術(温存術・乳房切除術)、薬物療法(ホルモン療法、抗HER2療法、化学療法)、放射線治療を組み合わせます。
近年は分子標的薬やCDK4/6阻害薬など選択肢が増え、個別化治療が進んでいます。
乳腺症(線維嚢胞性変化)
- 概要
ホルモン変動に伴い乳腺に硬さや嚢胞、線維化が起こる良性の状態です。20〜50代の女性に多く、月経周期に合わせて症状が増減します。
- 主な症状
乳房の張りや痛み(乳房痛)、ざらついたしこり感、左右差。
月経前に悪化し、月経後に軽快することが一般的です。
- 検査
触診、乳房エコーが基本。必要に応じてマンモグラフィで石灰化の有無を確認します。
- 治療
生活調整(ブラジャーの見直し、カフェイン・脂質の過剰摂取を控える)、鎮痛薬、漢方、などを症状に応じて検討します。
がんではありませんが、症状が続く場合は定期的なフォローが安心です。
乳腺線維腺腫
- 概要
若年〜30代に多い良性腫瘍で、ゴムのように弾力がある境界明瞭なしこりが典型です。
ホルモン影響を受け、妊娠・授乳期に大きくなることがあります。
- 主な症状
疼痛は少なく、触れると滑らかに動くしこり。
- 検査
エコーで楕円形・均一な内部エコーを示すことが多く、確定診断には針生検を行う場合があります。
マンモグラフィを追加することがあります。
- 治療
小さい・典型的な所見であれば経過観察。
大きくなる、痛みや不安が強い、形が非典型などの場合は摘出切除を検討します。
乳腺嚢胞(のうほう)
- 概要
乳管の閉塞などで液体が貯留した袋状の良性病変。
- 主な症状
突然のしこり、圧迫感。痛みを伴うこともあります。
- 検査
エコーで液体貯留の所見を確認。内容液が血性・濁っている場合は細胞診を行うことがあります。マンモグラフィを追加することがあります。
- 治療
症状が軽い場合は経過観察。張りが強い場合は穿刺吸引で改善します。内容に異常があれば追加検査を行います。
乳頭分泌(乳頭異常分泌)
- 概要
授乳していないのに乳頭から分泌が出る状態。透明・白色・黄色・血性など性状はさまざまです。片側・単孔性の血性分泌は、乳管内病変の可能性があり精査が必要です。
- 原因
乳管内乳頭腫(良性腫瘍)、乳管拡張症、ホルモン異常、薬剤性、まれに乳がんなど。
- 検査
分泌液の性状確認、乳房エコー、マンモグラフィ、乳管造影、場合によりMRI。
- 治療
原因に応じて経過観察、乳管内病変の切除などを行います。
乳腺炎
授乳期乳腺炎
概要
授乳期に乳汁うっ滞(うっ滞性乳腺炎)や細菌感染(化膿性乳腺炎)をきっかけに起こる炎症。
発熱、乳房の発赤・疼痛が典型で、膿瘍(うみの貯留)に進展することがあります。
検査
臨床症状、必要に応じてエコーで膿瘍の有無を確認。
治療
乳房マッサージ、搾乳、冷罨法・鎮痛薬、抗菌薬。膿瘍がある場合は切開排膿または穿刺排膿を行います。
早期に適切な対応をすれば、授乳の継続も可能です。
非授乳期乳腺炎
乳輪下膿瘍
概要
乳輪の下に膿瘍(うみの貯留)が起こるもの。陥没乳頭や喫煙者によく見られます。
検査
臨床症状、必要に応じてエコーで膿瘍の有無を確認。
治療
冷罨法・鎮痛薬、抗菌薬。膿瘍がある場合は切開排膿または穿刺排膿を行います。
肉芽腫性乳腺炎
概要
稀な乳腺炎ですが、乳房の至る所に炎症が起き、妊娠・授乳、自己免疫疾患、ウイルス・細菌感染との関連が言われています。
何度も繰り返すことが多いのが特徴的です。
検査
臨床症状、必要に応じてエコーで膿瘍の有無を確認。
治療
ステロイド 、自然緩解。
乳管内乳頭腫
- 概要
乳管の内側にできる良性腫瘍で、乳頭分泌(とくに血性)を伴うことが多い病変です。単発と多発があり、まれに非典型的増殖を伴うことがあります。
- 検査・治療
マンモグラフィ、エコー・乳管造影・MRIで評価し、確定診断や症状改善のために病変部の切除を行うことがあります。病理結果によっては追加フォローが必要です。
男性乳がん・女性化乳房
- 男性乳がん
男性にも乳腺は存在し、まれですが乳がんが発生します。硬いしこり、乳頭陥没、血性分泌などが症状です。家族歴や遺伝子(BRCA2など)の関与が指摘されます。検査・治療は女性と同様に個別化して行います。
- 女性化乳房
ホルモンバランスの変化(思春期や更年期のホルモンのアンバランス)、薬剤、肝疾患、甲状腺異常、肺結核、副腎腫瘍、下垂体病変、などで男性の乳腺が発達し、痛みや腫脹を生じます。原因検索と内科的・外科的治療を検討します。
自己チェックのポイント
-
毎月1回、月経終了後に乳房のセルフチェックを
鏡の前で左右差、皮膚のひきつれ、乳頭の変化を確認し、指の腹で円を描くように触れてしこりや圧痛を探します。
新たな変化(しこりが増大、血性分泌、皮膚の窪み・赤み、治らない痛み)がある場合は、早めに受診しましょう。
妊娠・授乳中でも受診可能です。
受診をおすすめするサイン
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片側の固いしこりがある
-
血の混じった分泌が出る
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皮膚がオレンジの皮のようにむくむ、えくぼ状にへこむ
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腋のしこりや痛みが続く
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家族に乳がんや卵巣がんの方がいる
当院の取り組み
- 乳腺専門医による診療と、最新の画像機器(高分解能エコー、マンモグラフィ)を用いた精密検査
- 針細胞診、針生検に対応
- 必要に応じて近隣の基幹病院と連携した治療体制
