デンスブレスト(高濃度乳腺)とは? 高濃度乳腺」と乳がん検診の正しい受け方

2026/6/19


医師監修コラム

デンスブレスト(高濃度乳腺)とは?

〜専門医が解説する「高濃度乳腺」と乳がん検診の正しい受け方〜

この記事の結論

デンスブレスト(高濃度乳腺(こうのうどにゅうせん)/高濃度乳房(こうのうどにゅうぼう))とは、乳房に占める乳腺組織の割合が多く、乳腺密度が高い状態のことで、病気ではありません。検診の結果で「乳腺濃度が高い」「乳腺が密」と書かれるのも同じ意味です。とくに日本人を含むアジア人や、若い世代・閉経前の方に多くみられます。

注意したいのは、高濃度乳腺ではマンモグラフィで乳腺が白く写るため、同じく白く写る乳がんが乳腺に隠れて見えにくくなる(マスキング)ことがある点です。そのため、超音波(エコー)検査を併用すると、より見つけやすくなることが分かっています。

ただし「高濃度乳腺だから乳がんになる」わけではありません。大切なのは、自分の乳腺のタイプを知り、年齢やリスクに合った検診を定期的に続けることです。この記事では、高濃度乳腺の意味と検診の受け方を専門医がやさしく解説します。

1 デンスブレスト(高濃度乳腺)とは?

乳房は、母乳をつくる乳腺組織(にゅうせんそしき)と、それを包む脂肪組織(しぼうそしき)でできています。このうち乳腺組織の割合が多く、乳腺密度(にゅうせんみつど)が高い状態を、デンスブレスト(高濃度乳腺)と呼びます。「デンス(dense)」とは英語で「密度が高い・濃い」という意味です。検診の結果通知では「高濃度乳房(こうのうどにゅうぼう)」「乳腺濃度が高い」「乳腺が密です」などと表現されることもありますが、いずれも同じ状態を指す言葉です。

まず知っておいていただきたいのは、高濃度乳腺は病気ではないということです。乳腺の量や濃さには個人差があり、体質や年齢、ホルモンの状態によって決まる「乳房のタイプのひとつ」にすぎません。

高濃度乳腺は、次のような方に多くみられます。

  • 日本人を含むアジア人(欧米人に比べて乳腺が密な傾向)
  • 若い世代・閉経前の方(年齢とともに乳腺は脂肪に置き換わり、濃度は下がっていく)
  • やせ型の方
知っておきたいポイント

高濃度乳腺は「異常」ではなく「体質」です。日本人女性ではむしろ多くみられるタイプで、検診で指摘されても心配しすぎる必要はありません。大切なのは、その特性に合わせて検診を選ぶことです。

2 乳腺の濃度は4つに分類される

マンモグラフィ(乳房のX線撮影。略して「マンモ」とも呼ばれます)では、乳腺の量を乳房の構成(こうせい)として評価し、画像の見え方から4つのタイプに分類します。このうち、乳腺密度の高い下の2つ(不均一高濃度・極めて高濃度)をまとめて高濃度乳腺(高濃度乳房/デンスブレスト)と呼びます。

分類乳腺の量見え方の特徴区分
脂肪性(しぼうせい)少ないほぼ脂肪。乳腺はわずか非高濃度
乳腺散在(にゅうせんさんざい)やや少ない脂肪のなかに乳腺が散らばる非高濃度
不均一高濃度(ふきんいつこうのうど)多い乳腺が密で、ところどころ濃い高濃度乳腺
極めて高濃度(きわめてこうのうど)非常に多い乳房全体が白く濃い高濃度乳腺

この分類は、撮影した医師(読影医(どくえいい))が画像を見て判断します。同じ人でも、年齢を重ねて乳腺が脂肪に置き換わると、濃度のタイプは少しずつ変わっていきます。

3 なぜマンモグラフィで「見えにくい」のか

高濃度乳腺で気をつけたいのは、マンモグラフィでの見えにくさです。これには、白黒画像の「色」が関係しています。マンモグラフィでは、それぞれ次のように写ります。

  • 乳腺組織白く写る
  • 脂肪組織黒く写る
  • 乳がん(しこり)白く写る

つまり、脂肪の多い乳房(黒い背景)では白いがんが目立ちますが、高濃度乳腺(白い背景)では、白いがんが乳腺に紛れて見えにくくなるのです。これをマスキング効果(隠れてしまう現象)と呼びます。雪景色のなかに白いウサギがいると見つけにくいのと同じイメージです。

大切な注意

「マンモグラフィで異常なし」と言われても、高濃度乳腺の方では小さながんが隠れている可能性をゼロにはできません。だからこそ、症状があるときの受診や、超音波検査の併用が大切になります。「異常なし=何もしなくてよい」ではない点を覚えておいてください。

なお、マンモグラフィが無意味というわけでは決してありません。マンモグラフィは、しこりをつくらない早期がんのサインである微細な石灰化(せっかいか)を見つけるのが得意で、高濃度乳腺の方にとっても重要な検査です。

4 高濃度乳腺と乳がんリスクの関係

高濃度乳腺については、「見えにくさ」とは別に、乳がんのなりやすさ(リスク)との関係も研究されています。複数の研究で、乳腺の濃度が高い人は、脂肪性の人に比べて乳がんになるリスクがやや高い傾向が報告されています。ただし、この点については次のように整理して理解することが大切です。

観点内容
見つけにくさ(マスキング)高濃度乳腺ではマンモグラフィでがんが隠れやすい。これは「検査の限界」の問題
なりやすさ(リスク)乳腺密度が高い人は乳がんリスクがやや高い傾向との報告がある。ただし影響の程度は研究により幅がある
主要エビデンス
  • マスキングと検診:日本で行われた大規模研究(J-START)では、マンモグラフィに超音波検査を加えると、乳がんの発見感度が向上し、早期がんの発見が増えたと報告されています。
  • 乳腺密度とリスク:海外の研究では、極めて高濃度の乳腺の人は、脂肪性の人に比べて乳がんリスクが数倍高い可能性が示されていますが、年齢やほかの要因も影響するため、密度だけで一律に判断はできません。

くり返しになりますが、「高濃度乳腺だから必ず乳がんになる」わけではありません。あくまで「タイプに合った検診を選ぶための情報」として受け止めてください。

5 高濃度乳腺の方におすすめの検診の受け方

高濃度乳腺の方が乳がんを早く見つけるためのカギは、検査を組み合わせることです。国内外の知見をもとに、現実的な受け方を整理します。

基本の考え方

  • マンモグラフィ+超音波(エコー)検査の併用が、見えにくさを補う有力な選択肢です。
  • 超音波検査は被ばくがなく、乳腺が密でもしこりを描き出しやすいため、高濃度乳腺と相性が良い検査です。

それぞれの検査の役割分担は、次のとおりです。

検査得意なこと高濃度乳腺での位置づけ
マンモグラフィ微細な石灰化の発見。早期の非浸潤がんのサインを捉える基本の検査。ただし腫瘤は見えにくいことがある
超音波(エコー)検査乳腺が密でもしこり(腫瘤)を描出。被ばくなしマンモの弱点を補う併用検査として有用
ブレスト・アウェアネス普段の乳房の状態を知り、変化に早く気づく年齢を問わず全員に大切な習慣

受け方のポイント

  • 自治体の対策型検診(多くは40歳以上・2年に1回のマンモグラフィ)をまず土台にする
  • 高濃度乳腺と分かっている方や、しこりなどの症状がある方は、超音波検査の併用を医療機関に相談する
  • 検査の組み合わせや頻度は、年齢・家族歴・症状によって変わるため、乳腺外科で個別に相談するのが確実です
補足

なお、日本の現在の対策型検診では、超音波検査はまだ標準の項目には入っていません。併用を希望する場合は、任意検診(人間ドックなど)や乳腺外科での相談が選択肢になります。

6 「高濃度乳腺です」と言われたときにすべきこと

検診結果や人間ドックで「高濃度乳腺」「乳腺濃度が高い」と書かれていても、慌てる必要はありません。これは異常を知らせる通知ではなく、あなたの乳房のタイプを伝える情報です。次の順序で考えましょう。

① まず落ち着く

高濃度乳腺は体質であり、それ自体が病気ではありません。日本人女性には多いタイプです。

② 「精密検査」の指示があるか確認する

  • 高濃度乳腺の記載だけで、ほかに所見がなければ、ただちに病気を意味するものではありません。
  • 一方で「要精密検査」「カテゴリー3以上」などの指示があれば、必ず乳腺外科を受診してください。

③ 今後の検診プランを相談する

  • 次回以降、超音波検査を併用するかどうかを医療機関で相談しましょう。
  • 気になるしこりや症状があるときは、検診の時期を待たずに乳腺外科を受診してください。

乳腺外科では、視触診・マンモグラフィ・超音波検査などを組み合わせ、あなたの乳腺のタイプに合った検診の受け方を一緒に考えます。「考えすぎかな」とためらわず、気軽にご相談ください。

7 専門家からのひとこと

外来でも、「マンモグラフィで高濃度乳腺と言われたのですが、がんですか?」と不安そうに来院される方が少なくありません。まずお伝えしたいのは、高濃度乳腺は多くの日本人女性に当てはまる体質であって、それ自体は病気ではないということです。

ただ、「見えにくさ」があるのは事実です。私はよく「白い紙の上の白い文字は読みにくいですよね」とお話しします。だからこそ、高濃度乳腺の方には超音波検査の併用をおすすめすることが多いのです。マンモグラフィと超音波は、それぞれ得意・不得意が違う検査で、組み合わせることでお互いの弱点を補い合えます

そしてもうひとつ大切なのは、検査任せにしないこと。普段から自分の乳房の状態を知っておき(ブレスト・アウェアネス)、いつもと違う変化に気づいたら、検診の時期を待たずに受診してください。「自分のタイプを知って、合った検診を、続ける」。これが高濃度乳腺の方の安心への近道です。

Q よくある質問(FAQ)

Q. 高濃度乳腺と言われました。乳がんなのでしょうか?

A. いいえ、高濃度乳腺は乳腺組織が多いという「体質」を表すもので、それ自体は病気ではありません。ただし、ほかに「要精密検査」などの指示がある場合は、必ず乳腺外科を受診してください。

Q. マンモグラフィで異常なしでした。安心してよいですか?

A. 基本的には心配いりませんが、高濃度乳腺の方では小さながんが乳腺に隠れて見えにくいことがあります。「異常なし」でも油断せず、超音波検査の併用を相談し、定期的な検診とブレスト・アウェアネスを続けましょう。

Q. 超音波(エコー)検査だけ受ければよいですか?

A. いいえ、おすすめできません。超音波はしこりの発見が得意な一方、マンモグラフィは微細な石灰化(早期がんのサイン)を見つけるのが得意です。両方を併用することで、見つけられる範囲が広がります。

Q. 高濃度乳腺は年齢とともに変わりますか?

A. はい。一般に、加齢や閉経にともなって乳腺は徐々に脂肪へ置き換わり、濃度は下がっていく傾向があります。そのため、若い世代ほど高濃度乳腺が多くみられます。

Q. 高濃度乳腺だと検診は受けなくてよいのですか?

A. 逆です。見えにくさがあるからこそ、検診をしっかり受けることが大切です。マンモグラフィを土台に、必要に応じて超音波を併用し、定期的に続けましょう。

Q. 「高濃度乳房」と「高濃度乳腺」「デンスブレスト」は違うものですか?

A. いいえ、すべて同じ状態を指す言葉です。検診の通知では「高濃度乳房」「乳腺濃度が高い」と書かれることが多く、医療機関では「高濃度乳腺」「デンスブレスト」とも呼ばれます。呼び方が違うだけで、心配する必要はありません。

9 監修者・著者プロフィール

監修

田中 完児(たなか かんじ)

リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 院長

学歴

昭和48年3月 大阪府立四条畷高校卒業
昭和55年3月 関西医科大学卒業

職歴

昭和55年4月 横須賀米海軍病院 インターン開始
昭和56年4月 関西医科大学付属病院外科学講座入局
平成7年4月 関西医科大学付属病院第二外科学講座 講師
平成8年11月 英国 Nottingham City Hospital, Breast unit 留学
平成15年4月 関西医科大学付属病院外科学講座(乳腺外科)講師
平成18年1月 関西医科大学付属枚方病院 乳腺外科・科長
平成19年4月 関西医科大学付属枚方病院 病院准教授
平成20年6月 リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 開院

免許・資格

ECFMG license of USA(米国医師免許)取得
GMC medical license of UK(英国医師免許)取得
日本乳癌学会専門医取得
日本外科学会専門医

役職

認定NPO法人 J.POSH 理事長
With you(あなたとブレストケアーを考える会)世話人

参考文献

  1. Ohuchi N, et al. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. Lancet. 2016;387(10016):341-348. — The Lancet
  2. 日本乳癌学会編. 乳癌診療ガイドライン2022年版(疫学・診断編). 金原出版. 2022. — 日本乳癌学会
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス. 乳がん検診について. — がん情報サービス
  4. Boyd NF, et al. Mammographic density and the risk and detection of breast cancer. New England Journal of Medicine. 2007;356(3):227-236. — NEJM
  5. 厚生労働省. がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(乳がん検診). — 厚生労働省(がん検診)
  6. 日本乳がん検診学会. 高濃度乳房について. — 日本乳がん検診学会

※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。検査の対象や費用はお住まいの自治体・医療機関によって異なります。症状が気になる場合は、必ず専門の医療機関を受診してください。

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