乳がん検診で「早期発見率76%」の時代へ

2026/4/1


乳がん検診で「早期発見率76%」の時代へ——20年のデータが示す、受診することの意味

〜専門医が解説する、乳がん検診が変えてきた20年間のリアル〜

【結論】乳がんの早期発見率(0期・I期)は2005年頃の約47%から2025年推計で約76%へと大幅に上昇し、進行がんの割合は半分以下に低下しています。この変化を支えてきたのが、継続的な乳がん検診の普及です。

1. 乳がん検診とは?——その目的と対象

乳がん(にゅうがん)とは、乳腺の細胞が異常増殖する悪性腫瘍です。日本では女性の約9人に1人が生涯に乳がんを経験するとされており、女性がかかるがんの中で最も多い病気です。

乳がん検診とは、症状がない段階から定期的に検査を行い、がんをできるだけ早期に発見することを目的としています。現在、日本では40歳以上の女性を対象に市区町村がマンモグラフィ検診を実施しており、2年に1回の受診が推奨されています。

マンモグラフィ(乳房X線撮影)とは?

乳房をプレートで挟んでX線撮影を行う検査です。微細な石灰化や小さなしこりを発見するのに優れており、触診では気づかない段階のがんを検出できます。

超音波(エコー)検査とは?

超音波を使って乳房内部の構造を画像化する検査です。放射線を使わないため体への負担が少なく、乳腺密度の高い方(デンスブレスト)でも病変を見つけやすい特長があります。

2. 20年で早期発見率は47%から76%へ

日本乳癌学会レジストリと全国がん登録のデータを見ると、乳がんが見つかったときの病期(ステージ)の分布は、この20年で劇的に変化しています。

2005年頃、乳がんが早期(0期・I期)で発見される割合は約47%でした。それが2025年の推計では約76%——乳がんの4人に3人が、早い段階で見つかるようになっています。

一方、進行した状態(III期・IV期)で初めて診断される割合は、15.5%から6.5%へと半分以下に低下しました。この変化の背景には、検診の普及と診断技術の進歩の両方があります。

図:乳がん初診時病期の年代別推移(日本乳癌学会レジストリ・全国がん登録推計値)

3. 「0期」発見が3倍に——データで見る変化

特に注目したいのが、がん細胞がまだ乳管の外に出ていない「0期(非浸潤がん)」で発見されるケースが、約20年で3倍近く(7.5% → 20%)に増えたことです。

0期で治療できれば、乳房を温存できる可能性が高く、治療後の日常生活への影響も最小限に抑えられます。「がんと診断されたけれど、思ったよりずっと早く回復できた」——そんな方が増えているのは、こうした超早期発見の積み重ねがあってこそです。

病期別割合の詳細データ

時期0期I期II期III期IV期早期(0+I期)進行(III+IV期)
2005年前後7.5%40.0%35.0%11.0%4.5%47.5%15.5%
2010年前後10.0%45.0%30.0%9.0%4.0%55.0%13.0%
2015年前後14.0%49.0%26.0%7.5%3.0%63.0%10.5%
2020年前後17.5%53.5%21.5%5.5%2.5%71.0%8.0%
2025年(推計)20.0%56.5%19.0%4.5%2.0%76.5%6.5%

※ 斜体は推計値。数値は概数。出典:日本乳癌学会レジストリ・全国がん登録推計値

4. 検診は「怖いもの」ではなく「選択肢を守るもの」

「もし乳がんだったらどうしよう」と思うと、検診に踏み出せない——そう感じている方は少なくありません。その気持ちはよくわかります。

しかし、見方を少し変えてみてください。検診とは、悪いものを探しに行く場所ではなく、もし何かあったとしても、最善の選択肢が残っているタイミングで気づくための場所です。

早く見つかれば:

  • 手術の方法(温存か全摘か)を選べる可能性が高まる
  • 薬物療法の選択肢が広がる
  • 仕事や子育てと両立しながら治療できる可能性が高まる
  • 精神的・身体的な負担を小さくできる

データが示す「4人に3人が早期発見」という数字は、検診を受け続けてきた多くの女性たちの積み重ねです。

5. 専門医からのひとこと(独自視点)

現場で多くの患者さんを診てきた立場からお伝えすると——

「検診で見つかってよかった」とおっしゃる患者さんと、「症状が出てから来た」とおっしゃる患者さんとでは、その後の治療の選択肢が大きく異なります。

特に、当院では超音波検査は医師が直接プローブを当てて確認するため、画像を見ながらその場でご説明できます。「これは何ですか?」という疑問にその場でお答えできることが、患者さんの不安を和らげることにもつながっています。

乳がんは今や、早期発見できれば「治る病気」になっています。検診の1時間が、その後の10年・20年を変えることがあります。ぜひ、勇気を出して受診してください。

6. よくある質問(FAQ)

Q. 乳がん検診は何歳から受ければいいですか?

A. 日本では40歳以上の女性を対象に、市区町村が2年に1回のマンモグラフィ検診を実施しています。ただし、ご家族に乳がんの方がいる場合や、乳房に気になる症状がある場合は年齢を問わずご相談ください。

Q. マンモグラフィと超音波検査、どちらを受ければいいですか?

A. それぞれ得意分野が異なります。マンモグラフィは微細な石灰化の検出に優れ、超音波は乳腺密度の高い方(デンスブレスト)でも病変を見つけやすい特長があります。当院では両方を組み合わせることで、より精度の高い検診を行っています。

Q. 検診で「要精密検査」と言われました。乳がんですか?

A. いいえ、要精密検査=乳がんではありません。要精密検査となる方のうち、実際に乳がんと診断される割合は数%程度です。多くは良性の変化であることがほとんどですが、確認のために精密検査を受けることが大切です。

Q. 痛みがなければ乳がんではないですか?

A. 乳がんの多くは初期には痛みを伴いません。「痛くないから大丈夫」と判断せず、定期的な検診で早期発見することが重要です。

7. 当院の乳がん検診について

当院では、マンモグラフィと超音波(エコー)検査を組み合わせた乳がん検診を行っています。超音波検査は医師が直接プローブを当てて確認しますので、気になる所見があればその場でわかりやすくご説明し、次のステップについてもすぐにご相談いただけます。

40歳以上の方には年1回の検診をおすすめしていますが、「家族に乳がんの人がいる」「しこりのようなものが気になる」という方は、年齢を問わずいつでもお気軽にご相談ください。

あなたが今日勇気を出してくださること——それが、未来の選択肢を守ることにつながっています。

8. 監修者・著者プロフィール

【監修】田中 完児(たなか かんじ)

リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 院長

■ 学歴

昭和48年3月 大阪府立四条畷高校卒業

昭和55年3月 関西医科大学卒業

■ 職歴

昭和55年4月 関西医科大学付属病院外科学講座 入局

平成7年4月  関西医科大学付属病院第二外科学講座 講師

平成8年11月 英国 Nottingham City Hospital, Breast unit 留学

平成15年4月 関西医科大学付属病院外科学講座(乳腺外科)講師

平成18年1月 関西医科大学付属枚方病院 乳腺外科・科長

平成19年4月 関西医科大学付属枚方病院 病院准教授

平成20年6月 リボン・ロゼ 田中完児乳腺クリニック 開院

■ 免許・資格

ECFMG license of USA(米国医師免許)取得

GMC medical license of UK(英国医師免許)取得

日本乳癌学会専門医 取得

■ 役職

認定NPO法人 J.posh  理事長
With you(あなたとブレストケアーを考える会)世話人

参考文献

  1. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 疫学・診断編 2022年版. 金原出版.
  2. 日本乳癌学会 全国乳がん患者登録調査委員会. 全国乳がん患者登録調査報告. 日本乳癌学会誌. 各年版.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス. 最新がん統計(乳がん). https://ganjoho.jp/
  4. 国立がん研究センター 社会と健康研究センター. 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ. 乳がん検診.
  5. 厚生労働省. がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針. 2021年改正版.
  6. Tabár L, et al. Swedish two-county trial: impact of mammographic screening on breast cancer mortality during 3 decades. Radiology. 2011;260(3):658-663.
  7. Bray F, et al. Global cancer statistics 2022: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2024;74(3):229-263.

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。症状や検診については、必ず医療機関にご相談ください。 

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